大島本庄の農道を散歩中、木陰に佇む可憐に咲くつる桔梗に出会いました。持ち帰って枯れるかと心配しながら植えましたが、数年のうちに予想外の所にもはびこるようになりました。
くま笹は園芸好きの伯父の家にあったものをいただき、これも根付きを心配したものですが、今や地生の笹を凌駕する勢いで垣根のように広がっています。この人けのない山中ではつる桔梗はカーテンのような面で、くま笹は直線の羅列を組んで根付きを心配した人間のことはおかまいなしに元気を謳歌しています。
「智恵子抄」ではないですが、島も空がきれいです。
木立の上に浮かぶ月の美しさにしばし足を止めていると、どこからか飛行機の音がします。
空路になっているのかここでは夜、飛行機をよく見かけます。赤い光を点滅させながら飛行機は、その身は暗闇に沈ませるように星々の合間をゆっくりと進んでいきます。私は親譲りの飛行機嫌い。乗ったことも乗る予定もないのですが、静かな山中で夜空と飛行機(その中にいるであろう人々と)を想う時、日常の慌ただしさを忘れます。
激しい春の風が吹きました。肌寒い日です。
風にも負けず花々が咲きました。白梅がりんと咲き、紅梅が八重の深い紅色をつけてぽつぽつと色を そえています。黄色の山茱萸、 万作も咲いています。この時期、我 窯は忙しい土仕事に追われ、花をめでることも忘れています。でも今年は幸運にもあんずが咲いているのに気付きました。あんずは短命であっという間に視野からはずれてしまうのです。
島も今年の冬の寒さは長く、春を告げる
様に一斉に咲く黄色の花々は見当たりま
せん。今治の展示会から帰宅した私たち、
作家A,Bを出迎えてくれた花木は椿で
した。
亡くなって13年になる山内達雄は花木
の好きな人でした。川辺に沿ってウナギ
の寝床のように細長い土地に朝倉窯を
築窯した時、二人で競って苗木を買い求
めたものです。
海が大好きな夫が、大島に第二の築窯を
決めた時は、朝倉で成長した花木たちが
大島山中の木々と仲良く馴染ん
でくれるかと案じたことを思い出します。